認知症という病気

たまたま認知症になっただけ。それでも生ききる。

認知症=ボケなのか

 はじめまして。

 

 私はこれまで10数年認知症患者と向き合ってきました。それこそ、在宅で過ごされている方々や、通所介護、老人ホームや老健で生活されている方々など、症状の進行具合には差があれど、様々な認知症患者と接してきたのです。現在は精神病床を有する病院にて、日々認知症患者様の生活支援をしています。

 

 さて、私が認知症を患った方々と接したのは介護保険が整備されてすぐくらいのことです。以前、認知症と言う名称ではなく、いわゆる物忘れ外来などに通われてきた方々の事は痴呆症と呼称していたのはご存知でしょうか。

 

 痴呆というと、『ボケたじいさん、ばあさんたちのことだろ?』と考える方がほとんどではないかと思います。平たく言えばその通りと言う事になります。では、ブログの最初の記事に認知症=ボケなのかというタイトルを選んだ理由と私の思いを書きたいと思います。(まずは認知症高齢者の話です。)

 

 勘の良い方ならお分かりでしょうが、私は認知症=ボケではないと考えているのです。認知症という疾患には定義があります。厚生労働省の文言を引用しますと、認知症は、脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態をいいます。』とあります。

 

 ポイントは、日常生活全般に支障をきたす状態があって初めて認知症と診断されるという点です。極端に言えば、ボケたなあと思うおじいさん、おばあさんでも生活に支障がなければ認知症とはいわないのです。

 

 表現が適切でないかも分かりませんが、精神科病院に受診に来る患者は、認知症の中でも上位の方々です。認知症が相当に進行しています。そういった方々はなぜ受診し、入院を希望されるのでしょうか。

 

 物忘れがひどいからでも、計算ができないからでもありません。暴力・暴言、排泄問題(弄便)や徘徊、妄想などの症状により、生活に著しく支障をきたしているからです。このような症状をBPSDと呼びます。

 

 病院にたどり着くまでに、家族や周りの方々は相当にご苦労を重ねてきたのだと思います。他人の事は許せても、家族の事となると目をつぶれないというのはよく言われていることです。

 

 認知症はなりたくない病気の中でも相当上位にランクインするでしょう。一度患ってしまえば、現在の医学では完治が難しい(ほぼ不可能です)悪性疾患です。

 肺癌になるからタバコを止めろと言われても止めない方がほとんどでしょうが、認知症になるぞと言われた途端に禁煙を考える方がいるでしょう。その辺は本当かはデータが足りませんが…。

 

 私は、前述したBPSDを和らげ、ただのボケたおじいさん、おばあさんに戻してあげることが出来れば、認知症を患っても生ききることが出来ると考えています。

 認知症患者と向き合ってきた経験と、今も向き合っていて感じることを共有することで、少しでも気持ちが楽になったり、前向きになれたりする方がいれば嬉しいです。

 

 ちょっとずつ書いていきたいと思いますので、よろしくお願いします。